アドベンチャーマラソン、それは世界で最も過酷なマラソン競技。灼熱の砂漠や標高5000mの雪山、広大なアマゾンのジャングル──過酷を極める大自然を舞台に、参加者たちは3日から1ヶ月間という長期にわたって命がけのレースを繰り広げる。濡らしたタオルが瞬時に凍る-50℃からプラスチック製品すら溶け出す50℃の砂漠まで、参加するレースによって気温の条件はさまざま。マラリアなど命にかかわる病原菌を運んでくる蚊や獰猛な野生動物もランナーにとっては大きな脅威となる。そんなアドベンチャーマラソンでは完走する体力はもちろんのこと、過酷な環境への適応能力や生き抜くための生命力、目標物がほとんどない中でも数日間走り続けられる精神力など、様々な能力が必要とされる。競技の歴史は古く、1986年にアフリカのサハラ砂漠で開催された「サハラマラソン(Marathon des Sables)」を皮切りに2019年までに50以上のレースが開催されており、大会数や参加者数ともに年々増加しつつある。

舞台

アドベンチャーマラソンは、雪山や砂漠、南極など壮大な大自然を舞台に行われる。200㎞から1000㎞以上まで、距離もさまざま。危険なレース環境であることも多く、断崖絶壁からの滑落で大ケガを負うことや、寒冷地におけるレースでは凍傷で命を落とす危険すらある。ゆえに完走率は総じて低く、難易度が高いコースでは30%となっている。

期間

3日間から1ヶ月まで、参加する大会によってさまざま。

参加条件

自己責任のもとに参加できること。また大会によっては極地経験やレース実績を求められることがある。

参加費

レースに参加するには、各選手が「参加費」を支払う必要がある。金額は10〜150万円まで、大会によって異なる。(その他に現地への渡航費、滞在費、装備費などが必要となる。)

主な主催団体

世界各国でレースが開催されているアドベンチャーマラソン。運営を取り仕切る主な団体をご紹介する。

Atlantide organisation internationale(フランス)
MDS(サハラ砂漠マラソン)を運営。

Racing the planet(香港)
4Deserts(ナミブ砂漠、ゴビ砂漠、アタカマ砂漠、南極)の運営。

Canal Aventure(フランス)
オーストラリアの荒野、ボリビアのウユニ塩湖、アフリカのサバンナなどの個性的な大会を運営。

Beyond The Ultimate(イギリス)
砂漠、ジャングル、北極圏など4大会運営。

ルール

10km〜40km以上ごと点在する各チェックポイントを通過しながらゴールを目指し、合計タイムで順位を競う。コース上に設けられたミニフラッグや標識を目印にして進む。大会によっては各自がGPS機器を使用しながらレースを行う。また一般的なマラソン同様に各区間(エリア)で制限時間が設けられており、制限時間をオーバーすると失格となる。サポートをつけることは禁止されており、自らの力だけでゴールを目指す。

レースの種類は大きく分けて、以下の2種類のジャンルがある。

1)ノンストップレース
スタートからゴールまで、ノンストップでレースを行う。レース途中で仮眠をとってもよし、不眠不休でいってもよし。上位を目指すためには睡眠時間を極限まで削ることになるので、過酷さは倍増する。残存体力や天候、ライバル達とのタイム差といったレース状況に合わせた判断をくだす必要があるため、より戦略性が求められる。

2)ステージレース
複数のステージにわたってレースを行い、ステージごとにタイムを計測。そして最終的な全ステージの合計タイムで順位を争う。毎ステージ一斉にスタートを切り、各ステージのゴール地点では選手一同が同じ場所で夜を過ごす。各ステージの距離は20km〜100km以上まで大会によって異なる。

所持品

食料や衣類や寝袋、ナイフ、ライト、包帯などのサバイバル道具を担いで走る。レース環境や個人差により違いはあるものの、その重さは概ね5〜15kgになる。 またレースによっては、泥水をろ過して飲むための浄水器や氷雪の上を走るためのアイゼン、毒虫などに刺された時に応急処置を施すための毒抜き器、地上の外敵から身を守るハンモックなども持参する。

賞金

賞金はない。レース参加者たちは己の限界に打ち勝つため、ライバルたちに勝って頂点を極めるために過酷なレースに挑み続けている。